チャーターしたボートのスピードはそれ程速くはなかったものの、
エンジンは安定して快調に航海していました。
時々高速艇が追い抜いて行きましたが短い距離の航海なので
楽しみながら進んでゆきました。
最終の岬を曲がればプンダキットの湾に入るところで、日に焼けた
若いボートマンはエンジンのスロットルを緩めスピードを落としました。
エンジンのスロットルは太い釣り糸のようなナイロン糸で、舷側の
内側に取り付けられた小さなウレタン片2枚に挟んで止める簡単な
ものでした。
エンジンの回るスピードが遅くなったので、どんなエンジンを
積んでいるのだろうかと時々エンジンの方をチラチラとみていると
小づくりのボートマンは特に何も説明なしに、積んであるパドルを
アウトリガーの根本に引っ掛けて船をコントロールしていました。
船の造りが結構直進性があるので、パドルでも曲がる時にときどき
海の中に突っ込めば曲がってくれるのだろう程度に考えていました。
ビーチまではあと1キロ程度だったので特に心配はしていませんでした。
最終の岬を曲がり、ビーチまであと200メートル程のところで
乗っていたボートは沖に停泊している誰も乗っていないボートに
近づき、身軽なボートマンは竹製のアウトりリガーを伝わってその
船にもやいを繋ぎました。
ここでも誰か友達に船の中から忘れ物を取って来てくれるよう
頼まれ、一時船を舫ったのかもしれないと思いました。
フィリピンのトライクやタクシーでもお客を乗せたままガソリンスタンドで
ガソリンを給油したり、お腹が空いたとベーカリーでパンデサルを
買ったりする事もよくある事なので、岸までもう少しなのにとは
思いながら何も言わずボートマンが帰ってくるのを待ちました。
待っている間、日焼けをし過ぎると後で痛いので、脱いでいた
シャツを着ました。
ボートマンは乗り移った船のティラーをレンチで外したりしていましたが
近くの手漕ぎの小さなボートに乗っている仲間に何やら声をかけていました。
その内に3人が乗った手漕ぎのボートが我々のボートに近づき、
一人が乗り移ってきました。
その男が若いボートマンに何かを言うと、即座に身軽なボートマンは
水の中に飛び込みました。飛沫が少し私にかかりました。
あまり時間がたたず船の中に戻ってきたボートマンは手になんと
船から外した金属製のラダーを持っていました。
ここでやっと事態が把握できました。
船のラダー又はティラーが壊れていたのです。
船のスピードを落としてから若いボートマンはスロットルの
調整を何回も変えて、状況を改善しようとしていたのは
間違いありません。
そういえば、エンジンのスピードを落としてからは顔が引きつって
いるようにも見え、リラックスしているようには見えませんでした。
岸まで200~300メートルであればエンジンをかけなくても風に
流されて行けば岸に漂着するので、それ程心配する事ではないのでは
ないかと思ったのですが、経験が十分でない若いボートマンはかなり
緊張していたようです。
最終エンジンをかけて岸に乗り付けたのですが、ボートのコントロールが
できずに岸に乗り上げると海岸近くで泳いでいる人を避け切れず負傷
させてしまうのではないかと心配をしていたようで、何とか
ラダーを操作できるようにしようとあらゆる事をしていたようです。
無事に岸に着き、チップを上げようと思ってはいたのですが、若い
ボートマンはそれどころではなく、船のオーナーに何と説明しようかと
考えているのか、こちらの方を一切見なかったのであげる機会が
ありませんでした。
このボート乗り場は漁協になっているようなので、万が一、船に何か
トラブルがあっても助け合って救出するようになっていると思いますので
今回の事はたまたま起きたハプニングだと思います。
陸にあがっているボートのラダーはこのようになっています。
30分程の航海の予定が浜に着いた時には45分程度かかっていたようです。
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